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疑惑の銃弾③-米軍報告、被弾は第三者の「破壊」と指摘

2009-04-18 07:05

 事故や事件の新聞報道が容疑者の職業によってその報道の大きさが違うのは理解したとしても、沖縄の新聞が事件や事故の内容より容疑者の人種、特に米軍属であるかどうかによって報道の大きさが著しく異なる。
 容疑者が沖縄人ならスルーするような些細な交通事故でも米兵が起こしたとなると新聞は針小棒大に報じる。
 米兵が米軍基地がらみで起こした事故・事件なら即座に特集記事を組んで連日抗議のキャンペーンを張るのは周知のことであるが、昨年の12月に発生した金武村伊芸区の「米軍被弾事件」に対する沖縄紙の報道は不可解な様相を呈してきた。
 米軍の実弾演習地に隣接する民家に装甲車をぶち抜くといわれる重機関銃の銃弾が撃ち込まれたのだ。
このような住民の生命に関わる重大事件に対しては保革に関わりなく、また米軍基地の反対、賛成に関係なく早期の解決が望まれた。
 筆者のように新聞記事をそのまま信用しないヘソ曲がりでも、当初は次のような報道から推して犯人は米軍だとほぼ断定していた。

  1. 被弾の民家が実弾演習所に隣接していること
  2. 撃ち込まれた銃弾が米軍使用のもの
  3. 事件当日米軍の演習が行われていた

 これだけ状況証拠が揃い、新聞が連日煽り立てれば誰だって米軍を犯人と思っても仕方がないだろう。
 早急にしかるべき米軍の責任者が被害者宅を訪れ謝罪して相応の補償をすべきだと考えていた。
 ところがである。
 3ヶ月以上に及ぶ米軍側の専門家の調査・検証の結果、3月末に「被弾は米軍の訓練ではない」との最終結論を発表して以来、あれほど声高に「訓練以外なら何が原因か」と叫んでいた新聞が急に静かになった。

2009年02月13日 琉球新報 ⇒ 伊芸被弾事件 訓練以外なら何が原因か(2009.2.13 琉球新報)

 沖縄タイムスなどは、米軍最終発表の翌4月1日付の一面と社会面のトップで大きく報じ更に2日の記事でも連続報じたので、「お約束」通り、連日蜂の巣を突いたようなキャンペーン記事が始まるのかと思った。

沖縄タイムス

2009年04月01日 沖縄タイムス ⇒米軍「訓練と関連なし」 金武流弾で最終見解【04月01日】 ※リンク切れ

2009年04月02日 沖縄タイムス ⇒訓練との関連否定 金武流弾事件/米軍最終報告「証拠みつからず」 ※リンク切れ

 金武町伊芸区で昨年12月13日、乗用車のナンバープレートに銃弾の金属片が突き刺さっていた事件で、在沖米海兵隊は1日、「訓練場から発砲された証拠が見つからなかった」として、最近の訓練との関連性をあらためて否定する最終報告をまとめ、調査を終了した。一方、県警は事件の解明に向け、引き続き捜査を行う考え。金武町議会は2日、米軍基地問題対策調査特別委員会を開き、今後の対応を協議する。
これまでの県警の鑑定では、金属片は米軍が使用する50口径通常弾「M33BALL」の弾芯と同種であることが判明している。
 海兵隊によると、今年1月末に来沖した訓練教育司令部所属の弾道専門家の解析調査で、50口径弾がキャンプ・ハンセンから伊芸区の方向に流れ出ることは、「統計学的にも確率が極めて低い」とされたという。
また、昨年12月9、10の両日に実施された部隊訓練で、7トントラックの砲塔に搭載したM2機関銃から8000発の50口径弾が発砲されたとしたが、乗用車が事件現場に駐車されたのは訓練終了以降となっていることから、「訓練とは関連がない」と結論付けた。
 儀武剛金武町長は「大変残念で強い憤りを感じる。このままうやむやにさせてはいけない。町としても出来る限り対応したい」と話した。池原政文伊芸区長は「予想通りの内容。訓練を継続したいがための言い訳にすぎない」と指摘。
 仲井眞真弘多知事は「米軍が現に使っている同種の弾なので、納得しにくい感がある」とコメントした。

2009年04月02日 沖縄タイムス ⇒伊芸被弾事件「訓練と日時一致せず」 目撃者証言と矛盾も2009年4月2日 ※リンク切れ

 再度繰り返す。
 ところがである。
 沖縄タイムスの関連報道は4月2日の朝刊一面と社会面で派手に報じて以来、急に腰が引けてしまった。
 翌4月3日の記事は急に小さなベタ記事で「金武町抗議の声も」と捨て台詞を残したきり。
 以後沖縄タイムスの紙面から「流弾事件」は姿を消してしまった。
 本来の沖縄タイムスなら抗議の社説を1~2回は書いてだろうしコラムでも糾弾の手を緩めるはずはない。
 にもかかわらず紙面から2週間以上も完全に消えてしまったわけは何なのだ。
 いや、完全に消えてしまったというのは必ずしも正確ではない。
 社説やコラムの代わりに、卑劣にも読者を使って「論壇」で抗議の姿勢は保っているつもりらしい。
 4月14日の沖縄タイムスオピニオン面の「論壇」は東村在住の教員・KKさんが、先日暴漢にコーヒーをかけられたメア米国総領事の「流弾は訓練と関係ない」という発言を逐一取り上げて批判している。
 タイムス4月14日の「論壇」タイトルはこれ。
<常識疑う米総領事発言>
<米艦船、流弾めぐり次々と>
 批判の対象のメア発言とはこれ。

2009年02月26日 琉球新報 ⇒「訓練の弾」に疑義 メア氏、米軍発射を否定(2009.2.26 琉球新報)

 「訓練の弾」に疑義 メア氏、米軍発射を否定2009年2月26日 ケビン・メア在沖米総領事は25日、定例記者会見で金武町伊芸被弾事件に関連して「(発見された銃弾は)第2次世界大戦の前から沖縄戦でも使われている弾であちこちにあるものだ」と述べ、現代の弾かどうかにも疑義を呈した。その上で「米軍と同じ弾だからといって、訓練から発射されたものだとは違う。個人的にもこの弾が米軍の訓練場から発射されたものだと考えていない。まず、発射されたのかどうかという疑問もあるが憶測はしない」とも述べた。(略)

 投稿者のKKさんは沖縄紙のオピニオン面ではお馴染みの左翼教員だが、左翼でなくともこれまでの新聞の論調を見たら誰だってメア発言を「盗人猛々しい」と批判するだろう。
 米軍の最終発表までの主な記事を琉球新報に限って拾ってもこの通りの有様だ。
 メア米国総領事に抗議の投稿をする気も良く理解できる。

金武被弾事件一覧

 沖縄タイムスが4月3日以降、事実上「流弾事件」には頬被りを決め込んでいるのに対し、まだ比較的良心の欠片は残っていると思われる新報は、タイムスが報じない次のような客観的記事を報じている。

2009年04月11日 琉球新報 ⇒伊芸被弾、第三者の「破壊」と指摘2009年4月11日

 「3月31日に発表された金武町伊芸被弾事件に対する米軍の最終報告で、米軍はレンジ内から発射された弾が駐車場の車両に突き刺さった証拠は一切ないとした上で、「道路上の危険」や第三者による「故意による破壊」といったほかの可能性を指摘していることが10日、分かった。「50口径弾は沖縄本島のほぼ全域で土中から発見されるもの」との記述もあり、米軍以外の第三者がどこからか弾を入手し、犯行に及んだ可能性があるとの見方を強く示している。米軍から県警に提出された最終報告文書で明らかになった。
 石川署の初動捜査報告書を基にした事実として、被害者は11日正午ごろに駐車場に駐車し、同日午後4時ごろ女性が「バン」という音と白煙を確認したことを記述しているが、併せて「(女性)以外の目撃者が存在しない」と証言の信憑(しんぴょう)性を疑う記述もある。県警は「音」と「白煙」の確認は10日だったとしており、大きく食い違っている。
 9、10日にレンジ7で実施された射撃は、7トントラックの砲塔に搭載されたM2重機関銃を使い、縦、横方向とも固定された位置で使用したことを強調。
 レンジ7の安全対策では、50口径弾が「跳弾」した上で訓練場内から伊芸区に飛び出す確率は極めて低い、としている。結論として、問題の弾芯は「訓練場内で行われたどんな武器訓練とも関係がない」と断定している。

 琉球新報は目撃者の名前を明記していないが、沖縄タイムスは女性の目撃者の名前を挙げて激しく米軍を糾弾していた。
 米軍発表によると「目撃者が虚偽の証言をしている」「何者かが流弾被害の細工をした」とも取れる主張である。
 だとしたら沖縄タイムスはこれまで読者を煽っていた手前このまま沈黙で通すのは可笑しいではないか。
 沖縄タイムスは記事で名前を明記した目撃者の名誉のためにも抗議の米軍糾弾キャンペーンを張るべきではないのか。
 2週間以上にも及ぶタイムスの沈黙は、目撃者がウソをついたとも取られかねない。
 米軍がウソツキなのか目撃者がウソツキなのか、いずれにせよ沖縄タイムスはこの問題をウヤムヤに終わらしては読者に対する大きな裏切りである。