タグ:  金武町流弾事故

疑惑の弾痕!① 米軍流弾事件 ウソつきはどちらだ

2010-03-18 08:01

 今朝の沖縄タイムスの一面と社会面のトップは、白抜きの派手な見出しのこれ。

 飲酒米兵 ひき逃げ (一面トップ)
 米兵ひき逃げ 猛速度 泣き声残し (三面トップ)

 被害者「子ども動揺」

 米兵の車両が病院の駐車場に迷い込んだだけで連日米兵糾弾の記事が続き、国会質問も出るくらいであるから、米兵が酔った上でのひき逃げは、タイムスが大見出しで派手に取り扱うことに異論はない。 もっともこのようなひき逃げ事件は米兵、沖縄人に関わりなく悪質ではあるが。

 沖縄紙のウェブ記事は更新が遅いので、琉球新報の電子版によると事件のあらましはこうだ。

琉球新報

2010年03月17日 琉球新報 ⇒米軍車両がひき逃げ 男児がけが 名護市辺野古(2010.3.17)

 1時ごろ、名護市辺野古の国道329号で、米軍車両が名護市に住む軍雇用員の男性(45)が運転する3人乗りの軽自動車に後ろから衝突した。この事故で軽自動車に乗っていた2歳の男児が顔に軽いけがを負った。
 県警がひき逃げ事件として逃走した車両を捜索していたところ、事故から約40分後に現場から約10キロ離れた金武町の国道329号沿いで、乗り捨てられた米軍のトラックを発見。米軍車両は米軍財産に当たるため、県警は日米地位協定に基づきトラックを押収せず、鑑識活動のみを実施。運転手についても米軍に照会している。【琉球新報電子版】

 米兵の起こした事件、事故ならどんな些細なことでも、抗議の議会決議そして「県民大会」へと扇動するのが沖縄紙の常道であるが、交通事故や窃盗、暴行等の事件は米軍基地が撤廃されたからといってなくなるわけではない。
 なぜなら沖縄人による同種の事故、事件は米兵のそれの何倍も多く発生しているが沖縄紙があえて報道しないだけであるから。
 だが、米軍の実弾による射撃訓練の流弾が民間住宅の車庫に駐車中の自家用車を直撃したとなると、問題は自ずと異なってくる。
 銃弾が自動車でなく住民を直撃する可能性があり、一歩誤れば大惨事にもなりうる重大事件であることは論を待たない。
 そしてこれは、他の米軍関連の事件と違って米軍基地が撤廃されれば、二度と起こることは無い事件でもある。
 だったら沖縄紙は、米兵の交通事故で大騒ぎするより、「疑惑の銃弾事件」を引き続いて糾弾する方が米軍基地反対運動の本筋ではないのか。

 昨日の沖縄タイムスの連載特集「安保改定50年 第3章地域協定(6)」に、忘れかけたような「米軍事件」が掲載されている。
 昨年の前半、沖縄タイムスと琉球新報が号外を出したり、社説を書いたりで、狂ったように糾弾し続けていた「金武町流弾事件」である。
 米軍の起こした事故は、それが些細な交通事故でも地元紙は大騒ぎすると再三の延べたが、実弾射撃訓練中の米軍の流れ弾が住宅街の民家の車庫に駐車中の車を直撃したとなると、問題は別だ。
 沖縄県民なら誰でも、これを些細な交通事故並みに軽く見過ごすわけにはいかないはずだ。
 この報道を聞いた当初、筆者は米軍は早急に責任者が謝罪し、それ相応の補償をしなければ収拾のつかない重大問題に発展すると考えていた。
 ところが事件は思わぬ「迷宮入り」という形で収束したのだ。
 これは米軍が犯人という意味では比較的単純な事件ではなかったのか。
 だが実は、事件発生当時、連日のように一面、社会面のトップで「米軍の凶行」を糾弾する報道を見ているうちに、一つの疑念が湧いていたのだ。
 「これはでっち上げではないか」と。
 地元新聞や県警が「米軍の犯行」と断言した「事件」が実は「でっち上げ」であった例は、少なからずある。
 「米兵女子中学生暴行事件」や「比女性婦女暴行事件」のような「でっち上げ事件」と同じように、この「金武町流弾事件」にも胡散臭さを感じたのだ。
 発見された銃弾は米軍が使用の銃弾だったが、米軍の「犯行」だと初動捜査に当たった県警が断定した唯一の、根拠は当時70歳女性の証言だけであった。
 だが、その後の米軍側の調査によると被弾をした車両が現場に駐車していた日時が県警の捜査と米軍の調査では丸一日の誤差が出てきた。
 「米軍の犯行」として簡単に一件落着のはずの事件が、意外な方向に展開していくことになる。

 沖縄タイムスの昨日の記事で事件の概要を説明するとこうなる。

沖縄タイムス

2010年03月17日 沖縄タイムス

 「安保改定 50年 題3章 地位協定(6)」
 金武町の流弾事件
 米軍弾特定も迷宮入り

 2008年12月10日午後3時すぎ、金武町伊芸区の民家の駐車場で「バーン」という乾いた音が響いた。 駐車場で鉢植えに散水していた玉城ミツさん=当時(70)が、音のした方を振り向くと、駐車場の地面から白煙があがっていた。 銃弾が発見されたのは3日後。 駐車場に止めてあった乗用車のナンバープレートに楕円形の穴が開き、銃弾のような金属片がめり込んでいた。「車がなかったら、私に当たっていた」。恐怖がこみ上げた。銃弾は長さ約4・5センチ、直径1センチ。 県警が鑑定した結果、同区に隣接する米軍キャンプ・ハンセンで使用されているものと同じ50口径弾と断定。 一方、米軍側は独自調査で、事件発生の前日と当日の部隊訓練で、M2重機関銃から8000発の50口径弾が発砲されたことを認めたものの、流弾との関係を否定した。(沖縄タイムス)

 ここまで読むと、初めてこの事件を知る読者なら、米軍の対応には到底納得ができないであろう。
 実弾訓練中の米軍の銃弾が民家を直撃しても、「犯人」の米軍は非を認めて謝罪するどころか、「自分等が発射したものではない」と開き直っているのだ。
 当然、新聞は糾弾のキャンペーンを大々的に打つだろうし、国会質問だって当然あってしかるべき問題だ。
 事実、沖縄タイムスは昨年の前半までは、一面トップは勿論社説や号外まで出して米軍の理不尽な言動を批判し国会質問まであった。
 ちなみに先日の米軍車両の駐車場迷い込み事件の際も「地位協定違反」だとして国会質問をした沖縄選出の社民党の照屋寛徳議員等は、沖縄県警に告発状を提出したくらいだ。

 ⇒ キャンプ・ハンセン司令官らを告発する

 ところがである。
 米軍側の二度に渡る調査の結果、銃弾は米軍使用のものと同種ではあるが、事件当日米軍が発射したものではないと当初の判断を確認した。
 そしてその根拠を、乗用車の弾痕は第三者が施したものであり、被弾した乗用車も事故当日現場に駐車していなかった、と断定したした。
 駐車の日時に関して、県警と米軍が真っ向から対立したのだ。
 つまり唯一の証言者の夫人の証言がウソであり、銃弾も誰かが細工したものだというのだ。
 米国本土から来県した専門の調査団のこの発表に、県警も緒言者も或いは自家用車の所有者も論理的な反論は何一つ出来ず、「近隣で米軍の実弾訓練があるのだから、犯人は米軍以外には考えられない」といった極めて感情的な反論に終始した。
 何より不可解なのは沖縄タイムスと琉球新報の報道姿勢の変化である。
 昨年の前半は連日米軍批判の報道を続け、このままでいくと当然「県民大会」にまで発展するのかと思ったのだが、後半に入ると目だって記事の数が減り、昨年末県警が不起訴にしたのを気に紙面で)関連記事を見ることはなかった。
 それが昨日、忘れた頃、ひょっこり沖縄タイムスの記事に現れたので驚いたのだ。  それも「安保50年」という特集記事に紛れるように。
 沖縄タイムスはリンク切れが早いので琉球新報をググッて見たら、昨年の12月の県警の不起訴を期にこの問題に終結をする気なのか、関連記事と社説で1年を締めくくっていた。

琉球新報

2009年12月10日 琉球新報 ⇒ 琉球新報 2009年12月10日 社説 【12月10日】

金武町被弾事件 協定改定し捜査の壁なくせ
 昨年12月、乗用車のナンバープレートから銃弾が発見された金武町伊芸区被弾事件で、那覇地検は被疑者が特定できないとして不起訴処分とした。米軍の銃弾であることが判明しているにもかかわらず、事件の幕引きが図られる。法治国家としてあってはならないことだ。
 事件や事故の再発防止や発生時の捜査の観点から、米軍基地を抱える全国の渉外知事会は日米地位協定改定を強く求めてきた。だが国は「運用改善で対応できる」と言い続けてきた。その結果が事件の“迷宮入り化”だ。
 事件の徹底した検証と事実解明なくして再発防止対策はありえない。伊芸区の池原政文区長は「問題がうやむやにされた。考えられない結果」と、危険な基地に隣接して暮らす不安と重大事件に対する処分に不満をぶつけている。
事件・事故の捜査は本来速やかに現場検証がされなければならない。事件発生後、県警は実弾射撃訓練場への立ち入り調査を米軍に再三求めていた。認められたのは発生から1年近くたった今年11月。当時、実弾射撃訓練に参加した部隊はすでに移動した可能性が高く、事情聴取に至らなかった。これでは真相解明などおぼつかない。
 銃器の特定もできず、県警は被疑者不詳の軽犯罪法違反で書類送検した。県警もじくじたる思いであろう。一方で、一歩間違えれば人命にもつながりかねない重大事件が、単なる軽犯罪法違反というのも納得がいかない。
 政府のいう運用改善とは「米軍の好意的考慮」を意味している。米軍に拒否されれば捜査は進展しない。今回の事案はその象徴的な事例といえる。
 運用改善でこの種の事案の解決は図れないと認識すべきにもかかわらず、岡田克也外相は「演習に伴う可能性はほとんどない」とする米軍の説明をうのみにしている。その上で「さまざまな努力を(米側に)お願いした」とコメントしている。政府は今回の事件や捜査の在り方に対する認識が甘すぎないか。
 事件はまぎれもなく国内で起きている。いかなる法律も条約も国民の命を守るためにあるべきで、法治国家の基本である。事件捜査に米軍への遠慮は不要。米軍の好意に依拠する捜査など主権国家にあってはならない。

地検が不起訴処分 金武町被弾事件2009年12月9日
 2008年12月10日に発生した金武町伊芸被弾事件で、県警が米軍の訓練との関連を調査し、軽犯罪法違反容疑で被疑者不詳のまま書類送検していた件で、那覇地検は8日、被疑者が特定できていないとして、同事件を不起訴処分と決定した。住民を危険にさらした事件は真相が解明されず刑事罰も問われぬまま、捜査は事実上終結した。また同事件の捜査で、県警が実弾射撃訓練場への立ち入り調査を複数回打診していたにもかかわらず、軍事機密にかかわるとして、09年7月末まで米軍側に拒否されていたことが、8日までに分かった。
 日米地位協定では公務中の事件の第一次裁判権は米軍側にあり、在沖海兵隊は被弾事件を調査し結果を09年4月に公表。(1)訓練場から伊芸区方向に銃弾が流れ飛ぶ確率が極めて低い(2)発生日に訓練は実施していない―などの理由で「最近の訓練とは関係ない」と結論を出し、米軍訓練施設からの流弾とみていた県警側をけん制していた。
 県警は09年2月に押収した弾丸を米軍のものと特定したと公表。関係者によると、複数回にわたり基地内立ち入り調査を要請したが、米軍側が軍事上の機密にかかわるとして難色を示し、両者間で調整が続けられたという。立ち入り調査は事件から約1年後の同年11月末に実現したが、訓練に参加した部隊はすでに移動した可能性が高く、事情聴取できなかったという。
 弾丸を発射したとみられる部隊から事情を聴けなかったほか、押収した弾丸から線条痕(ライフルマーク)が欠落していたため、県警は発射した機銃を特定できず、軽犯罪法違反の1年の時効間際に被疑者不詳のまま書類送検した。
 金武町伊芸区の池原政文区長は、不起訴の結果に「問題がうやむやにされてしまった。考えられない結果で非常に残念だ」と落胆した。

 この事件に関しては当日記の読者なら、事件の経過を承知しているだろうが、改めて読み返して見たい方の便宜を考えてブックマークで「金武町流弾事件」として分類しておいた。
 昨日の沖縄タイムス」記事も、上記引用の琉球新報記事も事件発生より既に一年以上経過しているため読者は詳細を忘れていると高をくくっているのか、米軍側が主張した被弾した自家用車の駐車日時の一日のズレについては卑劣にも一行も記していない。
 また基地の立ち入り調査を拒否されたため「地位協定の壁」が県警が充分な捜査が出来なかったような印象操作をしているが、事件を最初に捜査したのは米軍ではなく県警である。
 何しろ、事件は基地の中で起きたのではなく民間住宅でおきているのだ。 県警が充分な聞き取り捜査を出来ないはずはないし、タイムス、新報もその機動力を持ってすれば車の駐車時間のアリバイについては米軍の主張を容易に崩すことは出来たはずだ。
 現場の目撃証人の証言を客観的に調べることなく、「地位協定の壁」のせいにするのは言い掛かりにというものだ。
 なお本件は沖縄選出の共産党の赤嶺議員により国会質問をしたが、米軍側の回答は「理解はするが、米軍が発射していないという調査結果は正しい」としている。